★猫丸しりいず第291回


◎ホルスト:惑星  冨田勲(シンセサイザー)
(国内SONY SICC30112)
◎冨田勲:「リボンの騎士」の音楽 前川陽子(歌)他
(東芝 TOCT10404 ※廃盤)
今年は本当に偉大な音楽家の訃報が多い。


5月5日に冨田勲さんが84歳で亡くなった。ただ、冨田さんが20世紀後半
から今日までの日本の音楽シーンにもたらした巨大すぎる功績の割には、
その功績を総括し、再評価しようという流れが鈍いように思えて残念だ。


「トミタ」という音楽家を最初にどんな存在として認識したか、という部分
では、恐らく聴き手の世代によって様々な「ズレ」が生じる事だろう。
それは冨田さんが如何に長い年月に亘って、多彩且つ先進的な仕事を
成し遂げて来たかという証明にもなる訳であるが。


ちなみに私は最初に冨田さんの事を「シンセサイザーのオジサン」として
認識した。私が中学生の時の1977年に発売された「惑星」が、冨田勲という
音楽家に初めて「意識して」接した音源であった。これを初めて(LPで)
聴いた時はまさにブッ飛んだ。ホルストの原曲をかなり自由に扱いながら、
そこにまさに宇宙的な広がりとド迫力、そして繊細なファンタジーを織り込んだ
「トミタの惑星」のインパクトは絶大だった。冨田さんはワルター・カーロス
の名盤「スイッチト・オン・バッハ」に大きな衝撃を受け、自らもシンセサイザー
に取り組み、1974年に第一作の「月の光」で大ヒットを飛ばし、それから
次々と 「惑星」を含むヒット作を生み出した。ただ、私は最初に聴いた「惑星」
のインパクトがあまりに強烈だったためか、これ以外のアルバムには「惑星」
を上回るほどの感銘を受ける事が出来なかったのが正直なところ。


この「トミタ」というオジサンは一体何者なのだろう・・・と興味を持った私は
その後驚愕の事実を知る。彼の「正体」は作曲家だったのだ。それも
「新日本紀行」「きょうの料理」「教養特集」等々のテレビでお馴染みの
テーマ曲はこの人の作品だったのである。更に驚いた事に、「ジャングル
大帝」も「リボンの騎士」も「キャプテン・ウルトラ」も彼の作品・・・・。
自分は生まれてこの方、「トミタの生んだ音楽」に囲まれていたのか・・・と
知った時の驚きは忘れられない。実際、私を含む1960~1970年代の子供
たちは、冨田さんの音楽と一緒に育ってきたと言っても過言では無いと
思う。


無論冨田さんはその後も作曲を続け、ヴァーチャルシンガーの初音ミクを
「ソリスト」として起用した「イーハトーヴ交響曲」など、実験精神に溢れた
作品を多々生み出している。ただ、私個人としては、30~40歳代の冨田さん
が黎明期~全盛期のテレビのために作った膨大な作品群が「作曲家トミタ」
の頂点を極めていると強く感じる。「新日本紀行」や「教養特集」のテーマに
おける弦のユッタリした深い「歌」と、それを彩るホルンや木管の用法の
絶妙さ!まさに「トミタの音づくり」としか形容出来ない素晴らしさで、その
精神は後のシンセサイザー作品の「手作り感」溢れる音づくりにも引き継が
れている と感じられるのだ。


冨田さんのテレビのための作品の量はまさに膨大で、NHKの音楽だけでも1枚の
アルバムが出来てしまう程であるが、自分が「中高年」になって聴き直して
「ウ~ン これは凄い」と改めて唸ってしまったのがアニメや特撮ものの
テーマ曲。上述の「リボンの騎士」や「キャプテン・ウルトラ」に顕著だが、
50年前の曲とは思えぬ斬新さ。同時代のアニメ・ソングの「巨匠」として
既に当「猫丸」では渡辺岳夫や小林亜星をとりあげているが、
彼らの名曲がほぼ「昭和歌謡」的な「起承転結」の流れを土台にしている
のに対し、冨田勲の曲はそういう「お約束」的な構成から逸脱した、
大胆不敵な造りなのに驚かされる。


私が「20世紀最高の名歌手」の一人と確信する前川陽子さん(彼女も
「猫丸」でネタにした事があるが・・・・・・
言える名唱で聴く「リボンの騎士」のテーマ。今でも全く「古さ」を感じさせず、
「トミタ」という作曲家の並外れた才能と独創性に驚嘆させられる。
冨田さんの偉大すぎる業績が俯瞰出来る大プロジェクトが実現する事を
切望してやまない。それにしても、プロ中のプロたちの素晴らしい仕事を
浴びるように聴いて育った1960~1970年代の子供たち、つくづく幸せな
世代だと思う不肖猫丸である。

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