★猫丸しりいず第283回


◎セルメル:フランドルの謝肉祭、交響詩「プロメテウス」
ミハイル・ユロフスキ指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
(SIMAX PSC1233)
これまで有名無名を問わず、数多くの北欧の名曲をネタにしてきた当「猫丸」
であるが、様々な作品を聴くと、一口に「北欧」と言ってもその音楽作品は
地域によってかなり「味わい」が違う事に気付く。


私見ではあるが、北欧の音楽は西に行くほど「情」が濃く、東に行くほど響き
がクールになっていくように思える。「必要」とあらば濃い表情付けや猛々しい
音響も辞さないノルウェーやデンマークの楽曲に対し、スウェーデンや
フィンランドの作品は壮大に音楽が盛り上がる部分でも、「底」や「中心」の
部分にはどこかヒンヤリとした感触が残る。シベリウス、マデトヤ、クラミ等の
フィンランドの作品には特にそれを感ずる。「アイスクリームの天ぷら」みたいな
味わいか。


今回とり上げるのは、ノルウェーの知られざる名作。
このSIMAXの盤には二人の作曲家の作品が収録されている。前半には
スヴェンセンの作品が登場するが、この作曲家については以前「猫丸」でも
事があるし、彼の作品は多くは無いとは言え、そこそこ演奏される機会を持っている。
しかし、後半に登場するヨハン・ペテル・セルメル(1844~1910)は、マニアな私に
とっても初耳の人。グリーグやスヴェンセンと同世代で、この2人と同様に
ライプツィヒで学び、生前はかなりの名声と演奏機会を持っていた作曲家らしい。
だが、如何なる理由からか、彼の作品は没後全く忘れ去られ、今日に至るまで
「封印」されたような状態になってしまった。


セルメルって誰?という興味本位で入手したこの盤。聴いて驚き。
謎の男セルメルの作品、実に面白い。シンディング、スヴェンセン、ハルヴォルセン
等の作品が再評価されてきた中、セルメルの作品だけが、この録音が出るまで
まるでと言って良い程に無視されてきたのか、不可解としか言いようが無い。


ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」に触発されて生まれたという「フランドルの
謝肉祭」、お馴染みのギリシャ神話を素材にした「プロメテウス」。どちらも聴きごたえ
充分の名作である。何と言っても、如何にも「ノルウェー産」という趣きの人間臭さ、
土臭さが魅力的。「お高くとまったクール感」の無い、どこか「ユルさ」のある素朴な
響きと音楽運びはグリーグにも一脈通じる魅力がある。この一枚が、謎の男
セルメル再評価の狼煙となるか・・・と期待を抱いた私だったが、今のところ全然
そんな動きが見えないのは残念。もっと多くの作品を聴いてみたい作曲家で
あるのだが・・・・。


それにしても、音楽作品が長い歴史の中で生き残れるか否かというのは、本当に
難しく、不可思議な問題である。生前の評価と名声が作曲家の死と共にパッタリ
途絶えてしまう・・というケースについては、以前「猫丸」でもドレーゼケとゲルンスハイム
をご紹介した事があったが(http://blog-kichijyouji-classic.diskunion.net/Entry/2435/)、
そうすると同様なケースは他にもまだまだ有り得るという事なのだろうか。
クラシック音楽の世界、奥深すぎる。

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