★猫丸しりいず第263回

◎ミヨー:青列車
イーゴリ・マルケヴィッチ指揮 モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
(SCRIBENDUM SC014 ※廃盤 3枚組)

「ブルー・トレインが57年の歴史に幕」というニュースを耳にしたのは先日の事。

1958年のデビュー以来、国鉄、JRの時代を通じて親しまれていた「青い車両の
寝台列車」が、この夏の「北斗星」号の廃止に伴い、その長い歴史を閉じた。
乗り物ヲタクの私にとって特別な存在だった「ブルー・トレイン」の終焉は残念
ではあるが、まあ仕方が無いのかな・・・とも思う。

宮崎の祖父母の家に行く時に何度も乗った「富士」や「彗星」。幾度もお世話に
なった名門急行「銀河」等々、ブルー・トレインに関する思い出は限りないが、
航空機や新幹線の普及に伴うスピードアップで、日常の交通手段としての
「存在意義」は私が社会人になった四半世紀前には既に相当薄れていたので、
むしろここまで存続出来た事が奇跡なのかもしれない。ちなみに、昭和の
ブルー・トレインに近いノリの「寝台列車の旅」が楽しめる夜行列車の宝庫が
隣国中国なのだが、かの国も現在怒濤の勢いで高速鉄道の建設が進んでおり、
夜行長距離列車の今後については予断を許さない。

高校生の頃、「ブルー・トレイン」という名前のクラシック音楽作品があるらしい、
という事を聞きかじり、大いに興味の湧いた私は色々調べてみた。結果、その
曲は「ル・トラン・ブルー」というミヨーの作品で、マルケヴィッチによる録音が
あるらしい・・・という事がわかった。興味津々の私はあちこちのレコード屋を
探索したが、コンサート・ホールレーベルが初出で、その後ヴァレーズ・サラバンド
レーベルから再発・・というそのレコードは容易には見つからなかった。
今のようにネットで調べものが簡単に出来る時代では無く、モノを見つけるには
基本的に「店」に行くしかなかったその頃。残念ながら諦める他なかった。

それから四半世紀たったある日。SCRIBENDUMからマルケヴィッチのコンサート・
ホールレーベルの録音をまとめたBOXが出る・・・と言うので、どれどれ・・と
収録曲を見てみると。思わず「オーッ」と雄叫びを上げそうになってしまった。
泣く泣く入手を諦めたあの「青列車」が入っているではないか! イヤ、それだけ
では無い。アンリ・ソーゲの「牝猫」とか、オーリックの「うるさ方」等、「青列車」と
一緒に入っていた珍曲たちも収録!

苦節25年(笑)ようやく聴けた「青列車」、実にミヨーらしく屈託の無い楽しい作品
である。しかし、この曲は「鉄道」や「列車」を描いた曲では無い。あのディアギレフ
のロシア・バレエ団が1924年に上演したこのバレエは、南仏のバカンス地、
コートダジュールでテニスや水泳に興じる人々を描いたもので、台本をコクトー、
衣裳をココ・シャネルが担当したのだそうだ。「時代の最先端」を描いたこのバレエ
に相応しい豪華スタッフである。「青列車」とはカレーからパリを経て、バレエの
舞台となっている南仏へ向かう豪華列車の愛称で、この列車のデビューは1922年
。つまりはこの列車も初演当時の「時代の最先端」だったわけで、丁度「北斗星」が
「北海道への旅」を強く印象付ける「記号」のような役割を果たしたのと同様、
「青列車」は「セレブなヴァカンス」を連想させる、人々の憧憬の対象だったのだろう。
ただ、この歴史的名列車も日本同様に高速鉄道網が整備されたフランスで生き延びる
事は出来ず2007年には姿を消した。ミヨーの「青列車」も今日演奏、上演の機会が
ほとんど無いのは残念。

さてこのマルケヴィッチの録音は、1920年代にロシア・バレエ団で上演されたフランス人
作曲家の作品を集めたものだが、オケのメチャクチャな張り切りぶりが微笑ましい。
重心の高い、如何にも古き良きフランス系楽団という趣きの明るい響きが曲に
ピッタリ。ちなみにこのSCRIBENDUMのBOX、現在は廃盤のようだが、中古市場では
それなりに見かける品物。興味のある方は早めにゲットを!

ディスクユニオン吉祥寺クラシック館

〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-24
小島ビル3F
tel : 0422-23-3532
fax : 0422-23-3530
mail: dkkcl@diskunion.co.jp
買取専用フリーダイヤル

0120-273-537

営業時間

11:00~20:00