★猫丸しりいず第258回

◎ベートーヴェン:ウェリントンの勝利
ハインツ・ボンガルツ指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(国内ドイツ・シャルプラッテン TKCC15168 ※廃盤)
発表当時コテンパンに叩かれても、今や不動の名曲・・という存在の
クラシック音楽作品は多い。しかし、その真逆のパターンもある。
つまり、初演時は大ヒットするも、今日では全く歯牙にもかけられない・・
という可哀想な作品。その代表格と言えるのが「ウェリントンの勝利」。


メトロノームの発明者として知られる技師メルツェルが、新たに開発した
自動演奏楽器「パンハルモニコン」のプロモーション用?として、
ベートーヴェンに作曲を委託した曲。当時既に「6番」までの交響曲を
発表し、かなりの名声を得ていた彼を起用する事は、それなりの宣伝効果
が期待出来るとメルツェルは踏んだのだろう。以前「ディアベッリ変奏曲」を
とり上げた際にも触れたが、「自分のプロジェクトには、あのベートーヴェン
が参加しています!」と謳える事は、当時の音楽業界人にとってこの上なく
魅力的だったのだろう。こういう点は今も昔も変わらないようだ。


この曲は、1813年のスペインのビットリアにおける英仏の戦いで勝利した
英国のウェリントン候を讃える作品で、初演は熱狂的な大成功を収めた。
この時同時に初演されたのが「交響曲第7番」だが、初演当時は完全に
「ウェリントン」の方が主役で「7番」はオマケ扱いだったというのは、
今日では信じられない話ではある。今や「ベートーヴェン最大の駄作」という
輝かしい?称号まで得ているこの曲、確かに戦争シーンを描写した前半部分
はお手軽感炸裂で苦笑を禁じ得ない。でも英国軍の勝利の凱歌となる後半
は「エグモント」や「フィデリオ」の序曲に通じる「これぞベートーヴェン!」と
いう感じ のエネル ギッシュで推進力溢れる音楽が展開する。「頼まれ仕事」
のこの曲に、ベートーヴェンがどの程度「真剣」に取り組んだのかは不明
だが、結果としていかにも彼らしい作品になっているのはサスガだ。
確かに「名作」とは言い難いが、「駄作」と切り捨てるのは忍びないと私は思う。


それにしても、既にそれなりの名声を得ていた彼が、どうしてこんな、
当時としては破天荒なイベント音楽の作曲を引き受けたのか、と言えば
やっぱり「おカネ」の問題であろう。彼と「おカネ」の切実な関係に関しては、
当猫丸でピアノ曲「失くした小銭への怒り」をテーマにした際にもネタに
したけれど(コチラをどうぞ http://blog-kichijyouji-classic.diskunion.net/Entry/1965/
、彼にしてみれば、「おカネのための割り切った仕事」だったのかもしれない
この曲が、その後200年経っても聴き続けられている・・などという事態は全く
想像もしていなかったに違いない。


さて、今や全く無視されているように思えるこの曲の録音、決して少なくは無い。
「ここまでやりますか」と苦笑してしまう、我らがシェルヘン大先生の爆笑の
怪演を筆頭に、カラヤン、オーマンディ、ドラティ、マゼール、マリナー、カンゼル
等々そうそうたるメンバーが録音しているが、私にとってこの曲はハインツ・
ボンガルツ(1894~1978)でキマリである。旧東ドイツ指揮界の重鎮として活躍
した人だが録音には恵まれず、その限られた音源も「エグモント全曲」とか
ブルックナーの「6番」、ブラームスの「セレナード」、レーガーの作品集等々、
「よりによって」と思えるシブい曲目ばかり。この名匠、怪作「ウェリントン」に対して
クソ真面目と言って良い姿勢で取り組んでおり、後半の「勝利」の部分の驀進ぶり
は素晴らしい。独逸頑固おやぢの手によって、作品の価値が一段高められたと
感じられる程だ。もっと評価されるべき指揮者と思うが、この録音現在入手困難な
模様なのは残念無念・・・・・。

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