★猫丸しりいず第255回
◎大栗裕:ヴァイオリン協奏曲、管弦楽のための「神話」、大阪俗謡による幻想曲 他
下野竜也指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団  高木和弘(Vn)
(NAXOS 8555321J)
のっけから「宣伝」で申し訳ないが、ディスクユニオンが大阪に出店する事が決まった。
今年11月に梅田エリアにオープン予定で、詳細は今後段階的にお知らせしていく事に
なると思う。


大阪とクラシック音楽と言えば、何と言っても朝比奈&大阪フィルが頭に浮かぶし、
関西エリア出身の作曲家、演奏家も多い。せっかくなので、今回は朝比奈さんや大阪
フィルとも縁深く、作品そのものにも強く「大阪」を感じさせる作曲家、大栗裕(1918~
1982)をご紹介したい。


大栗という作曲家は、今回ご紹介のNAXOS盤にも収録されている「神話」や「大阪俗謡に
よる幻想曲」等で、吹奏楽の世界では以前からかなり親しまれていた人だそうだが、
実は私はこの盤の登場で初めて彼の存在を知った。

このNAXOS盤の片山杜秀さんのライナーノーツは、大栗氏を「大阪土着」の作曲家と
表現しているが、まさに的確である。船場の小間物問屋の生まれで、高校でホルンを
始め、作曲を独学し、戦後は朝比奈隆の要請で、関西交響楽団(現・大阪フィル)の
ホルン奏者を長年務めた・・という人。その作品は中々にユニークで、漠然とした「日本」
では無く、これほど「大阪」の匂いを強烈に放つクラシック音楽作品は他には見当たらない。


収録の4曲の中で、私が断然面白いと思ったのが「ヴァイオリン協奏曲」。1963年の作品で
毎日放送の委嘱作。何と辻久子の独奏と朝比奈隆の指揮という豪華な顔ぶれで初演
されたのだそうだ。大栗という作曲家を「浪速のバルトーク」などと呼ぶ事があるが、
この協奏曲はバルトークというより「いきなり関西弁で喋り出したショスタコーヴィッチ」と
いう感じである。ショスタコーヴィッチの「ヴァイオリン協奏曲第2番」の関西ヴァージョンという
趣き。オケと独奏ヴァイオリンのせわしない対話はあたかも早口のじゃべくり漫才の
ようでもある。ガンガン鳴りまくるオーケストラが誠に心地良い。オケが騒々しいヴァイオリン
協奏曲として、ヒンデミットの名作と共に東西の横綱の称号を与えたい傑作。この曲が
これまでどの位実演されているのか、寡聞にして知らないが、もっととり上げられて良い
(海外でも演奏されてほしい)作品と思う。


「神話」は元々吹奏楽曲であったものを、朝比奈の依頼により管弦楽曲にリメイクしたもの。
スサノオノミコトの乱暴狼藉に怒ったアマテラスが天岩戸に引き籠ってしまい、困った神々が
外で大宴会を催す。「一体何事だ」とアマテラスが岩屋の戸をちょっと開けたところを
すかさず怪力の神様タヂカラが扉をこじあけ、世界に光が戻ってめでたしめでたし・・・
というあの有名な神話を描いた交響詩。神々が岩屋の外で催す大宴会のシーンで
登場する舞曲。これが何だかバーバーの名作「メデアの復讐の踊り」の関西弁版という
趣きなのだ。コッテリ濃厚なバーバーに比べると、非常に重心が高く「能天気」な雰囲気を
放ってはいるが。演奏効果抜群の曲で、吹奏楽の世界で定番の名曲として親しまれている
らしいのもうなづける。


大栗の作品はどれも明快で後味が良い。そして「浪速のスピリット」みたいなものが伝わって
来る。「大阪地方区」ではなく「全国区」としてとり上げられるべき作品である。
オープン予定まであと3か月。「ディスクユニオン大阪店」、ご期待下さい!