★猫丸しりいず第253回
◎ラモー:組曲「優雅なインドの国々」
フランス・ブリュッヘン指揮 18世紀オーケストラ
(海外DECCA 4757780 ※PHILIPS音源)
神秘と混沌と魅惑の国、インド。


その音楽や文化は英国を中心とした欧州の音楽家(ジャンル問わず)に多大な
影響を与えた事は今さら言うまでもなかろう。


J.S.バッハと同時代に生きたフランスの大家、ジャン=フィリップ・ラモー(1683~1764)
の名曲「優雅なインドの国々」。ラモーの生きた時代のインドと言えば、あのムガル帝国が
絶頂期から徐々に落ち目に差し掛かりつつあった時期(世界遺産「タージ・マハル」は
1650年頃の完成との事)。おお!そんな昔からインドをネタにした作品が!と勇んで
内容を見ると、登場するのは「アフリカの奴隷」「寛大なトルコ人」「ペルーのインカ人」
「ペルシャ」等々・・・。肝心の「インド」が見当たらない。大体曲名もオカシイ。
インドの『国々』(複数形)って一体・・・。謎や驚きは深まるばかり。
まさに「インド人もビックリ」(古い)。


色々と調べてみると、ラモーの時代における「インド」とは、今日のインドを指すのでは
無く、当時のヨーロッパ人にとっての「異文化」を持った、エキゾティックで「未開」な
異国を総称する「記号」のようなものであったらしい。確かにムガル帝国の没落に伴い
欧州諸国がインドの支配に本格的に乗り出すのはラモーの死の直後の時代からであり、
この頃はまだ「黄金のジパング」同様、「インド」に関する具体的な情報は全く不足
していたのだと思われる。


ラモーのこの作品、「オペラ・バレ」という歌って踊って演じて・・・的な総合エンタテイメント
形式の傑作で、今年の5月には日本初演が練馬で行われたらしい。オペラ上演に当たって
華麗なバレエ場面を挿入するのは、その後もフランスのお家芸となるが、その源流は
この形式にあるのだろうか。後の古典派の作曲家たちの「トルコもの楽曲」のような
直接的なエスニック感は無いが、その明快で歯切れ良い音楽は理屈抜きに楽しく、
音楽を聴いているだけで楽しそうな舞台の展開が想像出来る。
ラモーという人はかなりのビッグネームでありながら、永らく本国フランス以外では
ほとんど日の目を見ない状況が続いてい た。ラモーの作品の上演、録音が急激に
増えたのは、ブリュッヘンやクリスティ、ミンコフスキ等々の「古楽系」の演奏家たちの
存在感が高まったCD時代以降ではないだろうか。


昨年他界したブリュッヘン率いる18世紀オーケストラ。彼らは古典派からロマン派に
至るまで数多くの録音を遺したが、正直なところ私には彼らの古典派、ロマン派作品の
演奏は面白いとは思うものの、全面的には賛同出来ない部分もある。その点、この
「優雅なインドの国々」はまさに彼らの本領発揮という感があり、文句なしに楽しめる。


ジメジメ湿った梅雨の日々にウンザリしている貴方。カラッと乾いて爽やかなこの曲は
おススメです。除湿効果抜群!(笑)