★猫丸しりいず第252回
◎カロミリス:管弦楽のための三連画、3つのギリシャ舞曲、交響曲第3番 他
バイロン・フィデツィス指揮 アテネ州立管弦楽団
(NAXOS 8557970)
◎スカルコッタス:弦楽のための7つのギリシャ舞曲
ニコス・クリストドゥル指揮 マルメ交響楽団
(BIS CD904)
今やすっかり欧州の「お騒がせ国家」になってしまった感のあるギリシャ。
最近はチプラス首相の顔や、アテネのシンタグマ広場や国会議事堂の
映像がニュースで流れない日が無い程である。


そのギリシャの作曲家として抜群の知名度を誇るテオドラキスは、既に「猫丸」の
ごく初期でとり上げたが、彼に比べれば知名度は全く低いものの、忘れてはならない
ギリシャの重要な作曲家2人が今回のテーマ。


まずはマノリス・カロミリス(1883~1962)。「ギリシャ国民楽派の父」と言われる男。
ウィーンで音楽を学んだという彼の作品、ワーグナーやR.シュトラウスばりの
後期ロマン派的な「濃い」味わいである。それなりに名前は知られているが、作品を
容易に聴けなかったカロミリス。ご紹介のNAXOS盤も全て世界初録音!の作品
ばかりだが、それが信じ難い程面白い曲が並んでいる。
「管弦楽のための三連画」は20世紀前半のギリシャを代表する大物政治家、
エレフテリオス・ヴェニゼロスの追悼のために書かれた作品(余談ながら飛行機好き
の方には、このヴェニゼロスの名をご存じの方が多いだろう。そう、アテネの国際空港
には彼の名前が冠せられている)。この曲の第2部は葬送行進曲となっているが、
これがまた「特濃」。悲劇的で荘厳ではあるが、「しめやか」な感じは薄い。
火にかけられた鍋の中でグラグラ沸騰する熱湯を見ているような、異様にホットな
「葬送行進曲」である。全曲通してとにかくインパクト充分な作品だ。


朗読を交えたユニークな「交響曲第3番」や、この国とトルコやアラブとの文化的
繋がりを思わせる異国情緒に満ちた「3つのギリシャ舞曲」などなど、どの作品も
色彩的な管弦楽やパワフルな音楽運びに魅了される佳作揃い。地元アテネのオケの
共感のこもった演奏も良い。


もう一人はニコス・スカルコッタス(1904~1949)。彼の作品は、カロミリスとは全く
違うスタイルと存在感を放っている。ベルリンに留学、クルト・ヴァイルやシェーンベルク
に作曲を学び、1933年に帰国。シェーンベルク直伝の無調や十二音技法で書かれた
作品が多く、ご紹介のBIS盤にカップリングされた「ヴァイオリン協奏曲」などは、
まさに「なんちゃってアルバン・ベルク」という趣きの曲に仕上がっている。
しかし彼の作品は当時のギリシャ音楽界においては余りにも尖鋭的、先駆的、急進的で
ありすぎた。結果、生前には全くその作品は評価されず、不遇なままに40歳代半ば
という若さで亡くなってしまった。そんな彼が珍しくも民族的な手法で書いた親しみやすい
名作が、弦楽のための「ギリシャ舞曲」。


この作品、バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」のギリシャ版・・という趣きの佳作。
昔、ギリシャの名指揮者ミルティアディス・カリディスがNHK響に客演した際にこの作品
をとりあげ、私はそれでスカルコッタスという作曲家の存在を知った。弦楽合奏という
編成のためでもあろうが「コテコテ特濃」という趣きのカロミリスとはまさに対照的な
スッキリした味わい。アラブ的でエキゾティックな終曲が特に印象深い。
BISはこの作曲家の作品をまとまった数録音しており、そういう点ではカロミリスよりは
(現時点では)恵まれた作曲家である。


ちなみにカロミリスの「交響曲第2番」には「素朴で善良な人々」という副題があって、
これはギリシャ人の事を指すのだ、との事。実際にギリシャの人々(と料理)に接すると
この「素朴で善良」という形容は中々当たっているように思う。そんな人々が「国ぐるみ」
でこれから進んでいかねばならない、恐らくは茨の道の「未体験ゾーン」。
一体どうなってしまうのか、
しばらくはこの国の動向から目が離せない。何があってもギリシャならではの良さは
失ってほしくないのだけれど・・・・。

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