★猫丸しりいず第239回
◎モーツァルト:ピアノソナタ第11番イ長調 K.331
ワルター・クリーン(P)
(米VOX CDX5046 ※2枚組 ピアノ・ソナタ集第2巻)
◎サイグン:交響曲第1番・第2番
アリ・ラシライネン指揮 ラインラント・プファルツ・フィルハーモニー管弦楽団
(独CPO 999819)
17世紀の欧州を震撼させた、オスマン・トルコ帝国のウィーン包囲戦。
この戦いの「置き土産」となったのは、コーヒーとクロワッサンと、そしてトルコの
軍楽。古典派の作曲家たちの間では「トルコ風」の音楽が一大ブームとなった。
その筆頭がモーツァルト。彼は余程トルコの音楽に魅了されたのか、
「ヴァイオリン協奏曲第5番」「後宮からの逃走」等の「トルコモノ」楽曲を色々
遺しているが、何と言っても筆頭は「トルコ行進曲」。
この曲とは随分長いお付き合いではあるが、私は何度この曲を聴いても
これが「行進曲」とは思えないし、それほど「異国的」とか「東方的」な響きも
感じない。後輩ベートーヴェンの「アテネの廃墟」のトルコ行進曲にはそれなりに
異国的なマーチという趣きは感じられるのだが・・・。


前回とりあげたゲルンスハイムやドレーゼケといった人々とは対照的に、
モーツァルトはどんな曲を書いても「モーツァルト印」の刻印をクッキリと残せる
稀有な才能の持ち主であった。以前に当「猫丸」で「音楽の冗談」をネタにした際
にも触れたが、モーツァルトには真の「コテコテ色物」的な作品はムリだったのかも
しれない。「音楽の冗談」でも、彼は彼なりのギャグや工夫を取り入れているのだが、
彼の「天才」というフィルターで濾過されてしまった結果、出来た作品は端正な
「モーツァルト的」な作品と「なってしまった」。上記の彼の「トルコモノ」作品にも
同様な事が感じられる。天才すぎる事はある面では困った事なのかもしれない。
毎度ながら凡才のヒガミかな?・・・


さてこの「11番」の録音はまさに無数と言える程に存在するが、私にとって
かけがえの無い1枚が今回ご紹介のクリーン盤。ウィーンの名匠、ワルター・
クリーン(1928~1991)が、1989年に来日した際に若杉弘指揮のN響と共演した
モーツァルトの「27番」の協奏曲が忘れ難い。当時私はこのピアニストの事を
全く知らなかったが、この上なく自然体で洒脱で、しかも上品なその演奏に私は
一発で魅了され、「次回来日の際には絶対リサイタルを聴きに行くぞ!」と心に
決めたものだった。しかし、その2年後に彼は62歳という若さで他界してしまった
のである。誠に痛恨事であった。この「ソナタ集」は1964年に録音されたものだが、
どの曲もまさに「自然体」の名演オンパレード。まるで風呂上がりのオッサンが
ご機嫌に鼻歌を歌いながら瓶ビールを飲んでます・・・みたいな感じである。
自然で楽しげなのに端正・・・。こういう境地の名演は、他にモンポウの自作自演
位しか思い当たらない。クリップスによる交響曲の録音(PHILIPS)と双璧と言える、
モーツァルトの名盤である。


ところで、西洋クラシック音楽の影響を受けたトルコの作曲家が遺した作品・・
という「逆パターン」のクラシック音楽作品に接した事がおありだろうか。
恐らく最も音源入手が容易と思われるトルコの作曲家が、アーメド・アドナン・
サイグン(1907~1991)である。イズミール出身で、パリでダンディに師事したという
この人の作品、CPOレーベルから数点CDが出ている。
トルコ・・・という事で、ハチャトゥリャンに代表されるコーカサスの作曲家たち
のようなエキゾティックで「濃い」曲を期待して聴くと、ある意味では肩透かし
を喰うかもしれない。この2曲の交響曲、確かにトルコの大地に根差した作品で
ある事は感じられるが、エネルギッシュではあるけれども決して「野蛮」では無い。
このCDのライナーノーツによれば、サイグンは1936年にバルトークが民謡の
収集でトルコを訪れた際、アシスタントや通訳を務めたのだそうだ。その影響なの
かはわからないが、サイグンの作品にはちょっとバルトークを連想させる一種
ヒンヤリとした感触がある。その辺りが好き嫌いを分ける可能性はあるが、
聴きやすい作品なので、コーカサスやバルカンの音楽に関心のある方には
ご一聴をおススメしたい。


実は「これぞ純正?トルコ行進曲!」と呼びたい作品をロシアの某作曲家が
遺しているのだが、この作品についてはまたの機会に・・・・

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