★猫丸しりいず第238回
◎ゲルンスハイム:交響曲第1番~第4番
ジークフリート・ケーラー指揮 ラインラント・プファルツ・フィルハーモニー管弦楽団
(独ARTE NOVA 74321 63635 2/※現行流通盤はANO636350)
◎ドレーゼケ:交響曲第3番「悲劇的」
ジョージ・ハンソン指揮 ヴッパータル交響楽団
(独MDG 3351041-2)
今日我々が日常的に親しんでいるクラシック音楽の「名曲」は、無数にある音楽作品の
中のほんの氷山の一角にすぎない。「大作曲家」と呼ばれる人たちもまた然りだ。

では「大作曲家」とそれ以外の大部分の「作曲家」を分けた境界線は何であったか。
この事については以前に当「猫丸」でサリエリをネタにした際にもとりあげたが
(詳しくはコチラで・・  http://blog-kichijyouji-classic.diskunion.net/Entry/1935/)、
どんな曲を聴いても「ああ、この人の作品だな」と聴き手に認識させるような真の個性、
その作曲家の「刻印」みたいなものを残せるまでの能力があったか否か・・という事に
尽きると思う。その「刻印」を刻める才能に恵まれたごく少数の作曲家の作品群は
何百年たっても繰り返し演奏され、確固たる地位を築いているのに対し、そうで無い
大多数の作曲家の作品たちは、作曲家の存命中はそこそこ演奏される機会はあっても
次第に忘れ去られ、埋没してしまう運命にある。これは仕方の無い事なのだろう。

しかし「B級」には「B級」ならではの味わいがあるのは、食べ物も芸術も同じである。
驚くような名曲とは言えないにしても、「忘却、淘汰されるには惜しい」と思わせる作品は
少なからず存在する。そんな作品たちの中から今回は「ドイツ交響曲の裏名作」をご紹介。

まずはフリードリヒ・ゲルンスハイム(1839~1916)の4曲の交響曲。この人、1833年生まれ
のブラームスと同世代だが、実際ブラームスと親交があり、いろいろとバックアップも
してもらったようだ。存命中はそこそこ演奏機会のあった彼の作品、永らく忘却されていたが
その再評価の嚆矢となったのが、この「交響曲全集」である。何の予備知識も無しに聴いて
みて、「オッ! この心地良いB級感(笑)はどこかで味わった事があるぞ」と即座に思った
のである。そう、それは当「猫丸」の第1回を飾ったあの「ブルッフの交響曲」に初めて
出会った時の感触と実に似ていた。ドイツ・ロマン派の名交響曲のパッチワークの ような、
突っ込みどころ満載ながら中々に心地良い響きと音楽運び。ゲルンスハイムの交響曲は
ブラームスを基調に、他のドイツ・ロマン派の大家たちの作品の断片が入り乱れ・・みたいな
感じだが、管(特に木管)の使い方が上手く、非常に手堅い手腕の持ち主だった事が想像
出来る。ただ、「これこそがゲルンスハイムの個性」と言えるような「刻印」は遺せていない
のは事実で、他の幾多の作曲家たちと同様、この壁を突き抜けられなかった事が
彼の作品が永らく埋没してしまう結果を招いたのだろう。しかし彼の交響曲は、ブルッフの
交響曲が好きという物好き(笑)な貴殿には全力でおススメしたい。

そしてもう一人。ゲルンスハイムと同世代のフェリックス・ドレーゼケ(1835~1913)。
彼も4曲の交響曲を遺している。ゲルンスハイムがシューマン、メンデルスゾーン寄りとするなら
ドレーゼケの作品は幾分リスト、ワーグナー寄りと言えるか。恰幅の良いガッチリとした造りで
「ユルさ」は感じさせない。彼はドレスデンを中心に活動した作曲家で、存命中は結構な
名声と演奏機会を持った人であったらしいが、没後しばらく経つと忘れられてしまう。
しかしその第2次大戦前、彼の音楽は一旦「復活」する。ナチスによって「利用」されたのだ。
いかにもドイツっぽい雰囲気を漂わせ、壮麗な響きの彼の作品はナチの「ニーズ」に合った
のだろう。彼にとってはハタ迷惑な「復活」であるが。実際フルトヴェングラーも彼の作品を
とりあげようとしたが、ナチに利用される事を恐れて見送った・・・という話も聞いた事がある。

そんな数奇な運命を辿った彼の作品も、CD時代になってようやく本当の再評価がなされて
いる。CPOレーベルからは交響曲全集も出ているし、今回ご紹介のMDG盤も演奏、録音共
非常にレヴェルが高い。彼の作品は「ドイツ・ロマン派のちょっと濃い目の最大公約数」みたい
なポジションに留まっている感は否めず、唯一無二の個性を感じさせる・・という訳では無い
ので、やはり「B級」テイストは拭えない。しかしゲルンスハイム同様、埋没され無視されるには
あまりに惜しい・・と思えるのも事実だ。

ごくわずかの「歴史的名曲」の陰に隠れて無数に蠢く「B級作品」たち。私はそれらの存在意義
を無視したくない。ここで宣言。「我はこれからもB級を愛す」。

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