★猫丸しりいず第226回
 
◎ワルトトイフェル:ワルツ「エスパーナ」
 
ウィリー・ボスコフスキー指揮 モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
(国内新星堂/EMI SAN37 ※廃盤)
 
◎J・シュトラウス:カドリーユ「オルフェウス」
 
ジョルジュ・プレートル指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(独DECCA 4780034 ※「ニューイヤーコンサート2008」)
 
 クラシック音楽に他の曲の「引用」や「パロディ」はつきもの。
それは「○○の主題による××」という曲が非常に多いことからもうかがえる。


しかし、中には「オイ!これ、良いんかい!」と突っ込みたくなるような、
権利関係のキビシイ現代では考えられない、凄い、と言うか「図々しい」
作品も少なからずある。「著作権」という考え方自体はかなり古くからあった
ようだが、印刷や録音等「同じモノを簡単に複製、保存できる」という技術の
進歩に伴って、それはどんどん厳格になっていったようである。
その点、19世紀の音楽界はかなりアバウトだったのだろう。「引用」とは
呼べないレベルの問題作(笑)が色々登場。


その一つが兄シュトラウスの「オルフェウス」。この曲、オッフェンバックの
「天国と地獄」(原題は「地獄のオルフェウス」)に触発された作品で、オッフェンバックの
作品が題材の曲。この曲の後半は、あの「フレンチカンカン」で有名な「天国と地獄序曲」が
「ほぼそのまま」登場。これ、シュトラウスの「作品」と呼んで良いのか・・・と
思わず迷ってしまうが、シュトラウスをはじめとする「エンタメ系」の作曲家たちは
当時ヒットしたオペラの名旋律を借用した作品を他にもかなり作っている。
まあ、一種の「ヒット曲情報」みたいなもので、あまり目くじら立てる人もいなかった
のだろう。大らかな時代である。
 
ちなみに、ご紹介の演奏はプレートルの遅すぎる再評価の嚆矢となった、2008年
の「ニューイヤーコンサート」のライヴ。プレートルへの賛辞は既に以前当「猫丸」
でも捧げているが(詳しくはコチラ http://blog-kichijyouji-classic.diskunion.net/Entry/1737/
オケの持ち味を十全に活かしながら、躍動感溢れるプレートルの音楽をどんな相手
にもやらせてしまうこの巨匠の凄腕には毎度驚嘆である。この演奏、とにかく
ウィーン・フィルの猛演ぶりが素晴らしい。
 
そしてもう一曲、爆笑ものの怪作をご紹介。
それは「フランスのワルツ王」エミール・ワルトトイフェル(1837~1915)の「エスパーナ」。
何の予備知識も無しにこの曲を初めて聴いた時の、クラシック・ファンの反応は様々
だろう。ある人はただ口をあんぐり、ある人は呆れて大笑い、またある人は「CDを
間違えたか?」と仰天・・・。私はどうだったかと言えば、予期せぬ不意打ちにあい、
最初は焦り、状況が把握出来たら大爆笑・・・という感じであった。


種明かしをしてしまえば、この曲、ワルトトイフェルと同世代のフランスの某有名作曲家の
「狂詩曲スペイン」(全然「某」になってないが)をほぼそのまま借用し、ワルツにして
しまった・・という大怪作である。あの「ラヴァース・コンチェルト」やカーメン・キャバレロの
「ショパンのポロネーズ」のように、元々3拍子の曲が偶数系の拍子に化けたものなら、
「アレンジ感」が強く出て、ある意味「違和感」は薄くなるのだが、この曲は原曲も3拍子系の
ため、ワルツのリズムにすっぽりとハマってしまい、かえって「インチキ臭さ」を助長
しているのが実に楽しい(笑)。聴けば聴くほど「図々しいなあ」と苦笑を禁じ得ない
怪曲だが、原作者のシャ○○エさん、笑って許してくれたんだろうか・・・?。


ご紹介の盤はボスコフスキーの数多い録音の中でも最高傑作!と私が確信する1枚。
珍しい顔合わせだが、モンテカルロ歌劇場のオケ(私、この楽団が結構好きである)の
明るく華やかな響きが作品をこの上なく引き立てている。有名な「女学生」(この題名、
実は誤訳らしいが)のカラッと爽快な仕上がりぶりはもう最高だ。しかし、国内盤は
かなり以前に出た新星堂の廉価盤以外見かけず、海外盤も入手困難で「幻の逸品」
になりつつあるのは遺憾。ワルトトイフェル再評価のためにも復活熱望!!!

ディスクユニオン吉祥寺クラシック館

〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-24
小島ビル3F
tel : 0422-23-3532
fax : 0422-23-3530
mail: dkkcl@diskunion.co.jp
買取専用フリーダイヤル

0120-273-537

営業時間

11:00~20:00