★猫丸しりいず第212回
 
◎ブルッフ:スコットランド幻想曲
マキシム・フェドトフ(Vn)
ドミトリ・ヤブロンスキー指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団
(NAXOS 8557395)
 
 昔、こんな夢を見た。
 

自宅の居間でダラダラしていたら、白昼突如悪魔乱入。
「こんにちは、猫丸君。君はヴァイオリンを弾けるのかね?」(注:声の出演/熊倉一雄)
 
「悪魔さん、何を出し抜けに・・。習った事も無いのに弾けませんよ。」
「フッフッフ・・・ そしたら猫丸君、君に1曲だけヴァイオリンの名曲を弾ける能力を授けようか・・。何の曲が良いかね?」
 
そこで私は間髪入れず、こう回答。「スコットランド幻想曲!」
「ほほう! 猫丸君。迷いが無くて潔いな。よかろう! じゃあ、その曲を弾けるようにして進ぜよう・・」
「ところで悪魔さん。その能力を手に入れるには、貴方に魂を捧げるとか、手数料として100億円(消費税込み/当時3%)
上納するとか、何かとんでも無い代償が必要なのではないんですか?」
 
「猫丸君。そんな大層なモノは要求せんよ。私の大好物のタラコを1年分年貢で納めてくれれば充分じゃよ。フフフ。」
「悪魔さん・・・ そんな所帯じみたもので良いんですか ホントに? でもどんなに好物でもタラコばっかり喰ってたら、
コレステロールたまりますよ」 と悪魔に説教を開始したところで目が覚めた。

 
この上なくバカバカしい展開であったが、自分が悪魔からの問いに「スコットランド幻想曲」と即答した事は、妙に
記憶に残った。なぜこの曲なのか。後から考えるとブラームスの協奏曲あたりも捨てがたいし、悪魔さんへのサービスと
しては「悪魔のトリル」とかでも良かったような気もするのだが・・・。そこで早速、この名作を聴いてみると改めて納得した。
この「スコットランド幻想曲」はヴァイオリンの魅力を30分に凝縮したような素晴らしい逸品である。
 
サラサーテのために作曲され、1881年に初演された作品。ただし、実際の初演はヨーゼフ・ヨアヒムによって行なわれた。
サラサーテとブルッフは「第1番」「第2番」の協奏曲では良好な関係を保っていたものの、この「スコットランド幻想曲」に
関しては、作曲の過程でいろいろ意見や感情の行き違いが生じ、結果ヨアヒムの出番となったらしい。まあ「人間関係」って
中々ムズカシイ。スコットランド民謡を素材にし、そこにブルッフらしい優しくメロディアスな味わいが加わったこの曲には、
日本人のDNAに訴える「ド演歌」っぽい要素が多分にある。中でもスコットランドの愛の歌を素材とした第3楽章は、何度
聴いても平常心でいられない位私は好きである。この第3楽章と、続く活気に溢れた終楽章とのコントラストも絶妙。
連綿たる「歌」と、歯切れよく活気に満ちた「歌」の見事な共存。自分にヴァイオリンを弾く能力があったなら、やはり真っ先に
弾きたい名作なのは間違いない。

 
余談ながら、この曲で印象的なのはシンバル。実は私は実演で聴くまで、この曲にシンバルが使われている事を知らなかった。
序奏に登場するこのシンバル。実に効果的、印象的なのだが、録音で聴いてもサッパリピンと来ないのは仕方無いところか。
こればかりは実演でないとこのシンバルの効果は体感出来ないのかもしれない。
「スコットランド幻想曲」の名盤と言えば、やはり何と言ってもこの名作の普及に多大な貢献をし、「クール・ビューティ」という
形容がピッタリのハイフェッツ盤を筆頭に、万人向けの秀演パールマン(EMI)、小気味よいチョーリャン・リン(SONY)等々、
枚挙にいとまが無いが、今回ご紹介のフェドトフは大穴名盤。万人向けとは決して言えないが、この曲をここまで恥ずかしげも
無く「歌いまくった」演奏も中々類例が無い。いつもながらロシア人、恐るべし!!!
それにしても、あの時の悪魔さん。もう一度夢に乱入して頂けませんか? もうコレステロールがどうしたとか説教しませんから、
「スコットランド幻想曲」弾かせて下さいよ・・・。ただ、浮世の世界は増税でヒーヒー言ってますので、出来れば手数料は安めで
お願いします・・・