★猫丸しりいず第195回
 
◎スヴェンセン:交響曲第1番・第2番
 
 アリ・ラシライネン指揮 ノルウェー放送管弦楽団
(WARNER APEX  0927406212

 
大きな声では言えないが(いや、言っても良いのだが)、「キャプテンC」が結構好きである。
 
しかし・・ 当店ブログをご覧頂いている親愛なる皆様の中で「キャプテンC」をご存じの方は恐らく皆無に近い、と思われる(万一ご存じの方がおられたら、多分私と同じ千葉県民であろう)。「キャプテンC」とは一体何者か??
 
彼は千葉テレビの番組から生まれた「ご当地ヒーロー」(正確には「キャプテン☆C」)。ゴレンジャー風の外見で、コスチュームが千葉を象徴する青(海)と黄(菜の花)というのがローカル風味炸裂。彼の任務は「世界征服を企む悪の秘密結社から地球を守る」などという大仰なものでは無い。街角に突然出現し、「バスや電車ではお年寄りや妊婦に席を譲ろう」とか「ゴミのポイ捨てはダメ」とかの公衆道徳を説いて回る、まるで1970年代教育テレビ風の庶民派ヒーローなのだ。
 
この「キャプテンC」、制作者も予想しなかった程の大人気となってしまい、今や千葉県各地(千葉、柏、市原など)でイベントやショーを開催すると、親子連れ数百人から、多い時には2,000人!が集まるというから凄い。その人気の秘密は、彼の、ただの「カッコ良いヒーロー」ではない、お茶目な一面を持った「ゆるキャラ」ならぬ「ゆるヒーロー」というコンセプトにあるのでは・・・との事。ちなみに「キャプテンC」の敵として登場する悪役キャラ「ダスターD」も、あの「ばいきんまん」に比肩し得る誠に愛すべき「ゆる悪役」だし、京成バスや千葉都市モノレール等の地元丸出しのロケ地といい、何ら必然性の無い戦闘シーンといい、脱力ポイント満載なのだが、世の中全体にギスギス感が漂う中ではこういう「ユルさ」が求められているのかもしれない。
 
ならば、クラシック界のキャプテンC、「ゆるキャラ」「ゆるヒーロー」に対抗しうる「ゆる交響曲」があっても良いではないか。決してコワモテにならず、素朴で、あまりの素朴さ加減にある種の気恥ずかしささえ感じてしまうが、でもやっぱり「名曲だ」と納得させてくれる。そんな交響曲を当猫丸としては「ゆる交響曲」と定義したい。
 
「ゆる交響曲」の代表選手は何と言ってもカリンニコフの2曲だろう。ウェーバーの「交響曲第1番」もかなりユルい。ただ、これらの曲は今やそれなりに知られているので、今回は知られざる北欧の「ゆる交響曲」、ノルウェーの作曲家スヴェンセン(1840~1911)の2曲の交響曲をご紹介したい。チャイコフスキーと同い年のこの作曲家、グリーグの親友だったそうだが、ビッグネームのグリーグに比べると、2曲の交響曲の他は「パリの謝肉祭」等が辛うじて(私のような北欧楽曲マニアに)知られているという程度にとどまっている。
 
彼の2曲の交響曲、特に「第1番」はあまりに素朴、純朴で「翳り」みたいなものがまるでなく、同じ「交響曲」というタイトルをまといながらマーラーの「10番」とかブルックナーの「9番」等の「彼岸が見えてます」系の交響曲とは対極といって良い世界に位置している。その屈託の無さに、私のような「不純なオヂサン」は逆に一瞬たじろいでしまう程だ。確かにこの2曲に対して「単純すぎる」とか「深みが足りない」とかの批判を浴びせる事は容易だろうが、「第2番」のあまりに「おおらか」なたたずまいに接すると、まさに「童心にかえる」ような、ムズカシイ理屈をこねくり回す前に音楽そのものの楽しさに身を任せてみてはどうなの、という天の声を聞くような気持になるのは確か。実際、グリーグは親友スヴェンセンの交響曲を聴いて、自作のハ短調の交響曲を「発表するに値せず」と封印してしまったのだそうだ。そのグリーグの交響曲は今では数種の録音が出ていて、個人的にはそんな「駄作」とは思えないのだが、確かにスヴェンセンの2曲に比べると「吹っ切れた」感じは薄く、どこか煮え切らない印象は確かに残る。もしグリーグが「真にノルウェー的な交響曲」を目指していたのだとしたら、スヴェンセンの交響曲を聴いて「参った!!」と感じた事は何だか理解出来る。
 
さてこの2曲の録音だが、やはりほとんどは北欧系の演奏家によっている。珍しくもメジャーレーベル(EMI)から出たヤンソンス&オスロ・フィルが廃盤なのは惜しいが、今回ご紹介の盤(FINLANDIA音源)も「ご当地」のオケによるもの。私はこのラシライネン&ノルウェー放送管のコンビの録音は、他にシンディングの交響曲等も愛聴している。このオケ、放送オケらしい機能美には乏しく、良くも悪くも豪快で粗削りな演奏を聴かせる事が多いが、そんな彼らの特色はこの「ゆる交響曲」には良くあっている。「最近血のめぐりが悪い」「肩凝りがヒドイ」とお悩みのアナタ、是非「ゆる交響曲」を聴いて、思い切り「脱力」してみては如何でしょうか?