★猫丸しりいず第163回
 
◎ハイドン:弦楽四重奏曲第77番「皇帝」
 
 アルバン・ベルク四重奏団
(国内TELDEC WPCS21061)
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「皇帝」とは一体何者か?
 
わかったようでわからない謎の存在、それが「皇帝」。
とりあえず「最高権力者」である事らしいのはわかるのだが、「由緒正しいお家柄の高貴な御方」であるのかと言えば、必ずしもそうではない。ブッ壊れた独裁者が「俺は明日から皇帝だ!」と宣言してしまえば、それで「皇帝」一丁上がりとなってしまうのがオソロシイところ。
 
この手の「皇帝」と言えば何たってあのナポレオンだろう。「皇帝即位」がベートーヴェンを激怒させ、あの「英雄交響曲」のナポレオンへの献呈をやめてしまった・・というお話でも有名である。ところがこんなナポレオン級のムチャクチャな「皇帝」がほんの35年前に存在していた事をご存じだろうか。その男の名はジャン=ベデル・ボカサ(1921~1996)。
 
1970年代、アフリカの独裁者として悪名を轟かせていたのがウガンダのアミン大統領だが、彼に比肩し得る大奇人にして独裁者として知られたのが、中央アフリカ共和国の大統領だったこの男である(何と1970年の大阪万博の行事のために来日した事もあるらしい)。クーデターで実権を握り、「終身大統領」を勝手に宣言するがそれだけでは足りず、突如「俺は皇帝ボカサ1世だ!」と宣言して勝手に皇帝に「即位」。
その翌年1977年にはナポレオンを模した・・とも言われたド派手、豪華絢爛な「戴冠式」を行ない、その様子は世界中にテレビで放映された。当時中学生だった私もこのニュース映像を見た事を鮮明に覚えているが、「何だ、このオヤジは」と呆れ返った事をよ~く覚えている。
 
国家予算の2倍!にも当たる金額を浪費したこの「戴冠式」は、当然ながら世界中から嘲笑を浴びる事になったが、貧困と独裁に苦しむ国民にしてみれば全く笑い事では無い。
結局わずか3年足らずで「帝国」は崩壊。ボカサはフランスへ亡命・・という結末に。独裁者は権力欲に捕らわれた挙句に実にみっともない末路を辿る・・という事をわかりやすく示してくれたボカサ皇帝ではあるが、21世紀の今でさえ、時代錯誤の独裁者が世界には存在し続けているのは全く遺憾。ウ~ン、それにしても「皇帝」って一体何者・・・
 
そんな「皇帝」がらみの名作と言えばベートーヴェンやヨハン・シュトラウスの作品もあるけれど、私にとってまずこれ!と言えるのがハイドンの作品。
ハイドンが渡英した際に耳にした英国国歌に感銘を受け、オーストリアにもこんな国歌が欲しい!と思い立って作曲したのが「皇帝讃歌」。この旋律を第2楽章に用いた事で、「皇帝」という愛称が付いたのは皆様ご承知の通り。この曲、現在でもドイツの国歌として「現役」であるが、数ある国歌の中でも「荘厳系国歌の最高峰」と私が信ずる名曲である。そう言えばこの「猫丸」のごく初期に「国歌」をテーマにした際にもこの事には触れているので、ご興味のある方はこちらを・・ http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Category/17/14/
それにしてもこの作品、凛々しいフォルム、完璧な造形、にもかかわらず堅苦しさが無く、聴いていてウキウキする楽しさ・・と、まさにド天才ハイドン大先生にしか出来ない凄い名曲。100曲以上の交響曲を遺し、「交響曲の父」と言われた上、更に70曲近い弦楽四重奏曲の名作まで書いてしまうとは・・・。ハイドンさん、アンタ本当に「超人」ですよ。
名盤も山ほどある「皇帝」だが、アルバン・ベルク四重奏団の初期(1974年)の録音が私の愛聴盤。廉価な上、モーツァルトの「狩」とのカップリングという入門者にも好適な1枚!。
 

 

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