★猫丸しりいず第161回
 
◎メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」
 
 ケント・ナガノ指揮 ハレ管弦楽団 ジョセ・ヴァン・ダム(Br)他
(独DG 4451762 4枚組)
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 新しいローマ教皇が選出された・・というニュースが先日世界を駆け巡った。
 
私が物心ついた頃のローマ教皇はパウロ6世。続くヨハネ・パウロ1世はわずか在位1カ月で急死(そのあまりに唐突で不自然な死から、未だに「謀殺説」が消えない。キリル・コンドラシンみたいだが・・)。その後、ヨハネ・パウロ2世、ベネディクト16世と続いて、今回南米(アルゼンチン)から初めて選ばれた新教皇は、私の生まれてから5人目という事になる。
 
新しいローマ教皇が決まる時に私がいつも関心があるのは、「どの国の出身者が選ばれるか?」「新教皇がどんな名前を名乗るのか?」の2点である。今回、新教皇は初めて南米アルゼンチンから選ばれた。この点は「次の教皇はカトリック人口の多い南米から選ばれるのでは」という下馬評もあったので、自分にとってそれ程驚く出来事では無かったのだが、驚いたのは「名前」である。新教皇の名は「フランシスコ」。キリスト教信者以外にも広く知られている聖人の名を名乗った教皇がこれまでいなかった・・というのは全く意外であった。
 
新教皇は枢機卿時代から貧困問題に熱心に取り組んできた人だそうで、
「教皇になっても貧しい人々の事を忘れないように」という気持ちを込め、清貧で知られる「アッシジの聖フランチェスコ」にちなんだ名を名乗る事にしたのだそうだ。米国のサンフランシスコという都市名のルーツともなっているこの聖人。裕福な商人の子として生まれ、若い頃は放蕩三昧の生活を送っていたが、20歳代半ばに禁欲的、宗教的な生活に目覚め、ハンセン病の患者たちを助け、父親と衝突して勘当された後はボロをまとって質素な生活を送りながら貧しい人々に生涯手を差し伸べた・・という人。
この聖人を素材としたクラシック音楽作品は、リストやプーランクにもあるが、何と言っても代表選手はメシアンの超大作オペラ。
 
1983年に小澤征爾の指揮でパリで初演された時は大変な話題となったこの作品、上演に4時間以上かかる超大作である。敬虔なカトリック教徒であり、鳥ヲタク(鳥類学者!)であったメシアンにとって、小鳥に説法するカトリックの聖人はうってつけの題材と言える。作品はまさにメシアンの「集大成」と呼ぶにふさわしい内容で、彼の作品に親しんでいる方なら、「メシアン節」と言う感じの音楽があちこちで聴かれる事に気付かれるだろう。ただ、とにかく長いので気軽に聴ける作品では無いし、上演コストもかなりのものと思われ、全曲を録音、商品化するレーベルは現れないのでは・・と私は思っていた。だからこのナガノ盤が登場した時は大いに驚かされたが、充実した演奏といい、この上ない快挙と言える。この手の盤は安定供給されないのが常なので、入手出来る時にゲットするのが鉄則!
 
権謀術数渦巻く?ヴァチカンの世界の中に新教皇が清新な風を吹き込めるか? しばらくはフランシスコ教皇の動向から目が離せない。