★猫丸しりいず第159回
 
◎チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
 ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
 フランク:交響的変奏曲
 
 モニク・ドゥ・ラ・ブリュショルリ(P)
 ルドルフ・モラルト指揮 ウィーン交響楽団
 ヨネル・ペルレア指揮 コンセール・コロンヌ管弦楽団(ラフマニノフ&フランク)
(国内コロムビア/VOX COCQ84712)
 
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 これまで様々なクラシック音楽のコンサートに行って、シミジミと感じた事。それは「ピアニストって重労働」。
 
 私自身はピアノを弾けないので、実際に「ピアノの演奏」という行為がどの位の運動量なのかを実感として理解している訳では無いし、もちろん他の楽器の奏者と比べてどうこう・・・と論ずる事も出来ないのだが、演奏している姿を間近に見れば、ピアニストが大曲1曲弾くのに相当なエネルギーを要している事は感じられる。だから例えば、「ブラームスのピアノ協奏曲2曲を一晩のコンサートで弾く」なんて事が如何に無謀な事か、そしてそれを成し遂げてしまう奏者が恐らく本当に強靭な体力の持ち主であるであろう・・と言う事は何となく想像はつく。その奏者が女性であれば、尚更印象は強烈だ。
 
 アルゲリッチ、ユジャ・ワン等々、「剛腕型」と呼びたい女性ピアニストは居るが、今回は「元祖剛腕女流」と呼びたい素晴らしいピアニストがテーマ。その人の名はモニク・ドゥ・ラ・ブルショルリ(1915-1972)。パリに生まれ、コルトーやザウアーに師事し、1940~50年代にかけて大活躍したが、不幸にも演奏旅行先のルーマニアで交通事故に遭遇して左腕を痛めて演奏家としてのキャリアを絶たれ、56歳という若さでひっそりと亡くなってしまった人である。
 
「全盛期の録音がモノラル録音期にあたったため、今日の評価で非常に損をしている演奏家」として、当「猫丸」ではロジンスキーやネルソヴァを既にとり上げたが、このブルショルリもその一人で、録音自体があまり多くなかった事もあり、レコード時代からのオールド・ファンと、ステレオ時代のリスナーとで知名度、人気に大きな差異がある。事実、私もこのピアニストの存在を知ったのはそんな昔の事では無い。
 
しかし、その出会いはあまりに鮮烈だった。それが今回ご紹介のチャイコフスキーの協奏曲。1952年頃の録音である故、音の古さは否めないが、聴き始めるとたちまち引き込まれ、音質の事などすぐにどうでも良くなってしまう(日本のリスナーは「ステレオか否か」という点にあまりにこだわり過ぎている人が多く、モノラル録音というだけで門前払いをしてしまい、結果優れた演奏に接する機会を自ら放棄してしまっているケースが多いのは非常に残念だ)。
 
この曲はブルショルリの十八番だったらしいが、とにかく強靭でダイナミック。しかもガンガン弾いても音が汚らしくなったり、雑な印象を与えたり・・という事が無く、実にしなやかで品格が高いのである。「こんなピアニストがいたのか!」と驚かされたこの1枚、共演のモラルト指揮ウィーン響の演奏がまた素晴らしい。ソリストの豪演に触発されたか「負けてられるか!」とばかりに豪快な演奏をやってくれる。モラルト(1902~1958)はリヒャルト・シュトラウスの甥っ子として知られるドイツの指揮者。主にオペラ指揮者として活躍し、ドイツ系のオペラの録音も結構遺している。が、この人もこれから円熟という齢で惜しくも逝ってしまったため、今日ほとんど忘れ去られた存在になってしまった。ヨッフム、クリップスと同い年であるだけに、彼らのように長生きしてくれればきっとシブい名匠になっていたと想像される。
そういう意味でもこれは貴重な音源だ。オリジナルLPのデザインを生かしたジャケットも最高だ。昔のレコードジャケットって、どうしてこう「粋(いき)」なんだろうか。
 
個性派の揃った1950年代の録音は、まさに「宝の山」。くどいようだが、「モノラルだから」という理由だけでこれらを聴かずに終わるのはもったいなさすぎる話。さあ貴殿も名演、凄演、怪演の花園、1950年代の世界へいらっしゃい・・・・
 

 

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