★猫丸しりいず第158回
 
◎ジョリヴェ:トランペット協奏曲第2番、オンド・マルトノ協奏曲 他
 
 モーリス・アンドレ(Tp) ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ)他
 アンドレ・ジョリヴェ指揮 コンセール・ラムルー管弦楽団 他
(仏ERATO 2564613202 4枚組「ジョリヴェ・エラート録音集成」)
 
 
◎ジョリヴェ:赤道コンチェルト
 
 フィリップ・アントルモン(P) アンドレ・ジョリヴェ指揮 パリ音楽院管弦楽団
(国内SONYCLASSICAL SICC1522)
 
f4ac047d.jpegf3f884aa.jpeg
一昔前はフランスの現代音楽界でメシアンと並ぶ存在感を放っていた、鬼才ジョリヴェ(1905~1974)。既にこの「猫丸」でも随分前(第48回)に2台のピアノのための珍曲「パチンコ」をご紹介済みだ。その際にも触れたが、相当に面白いユニークな作品を多々遺しているにもかかわらず、最近はこの人、とても地味な存在に甘んじているのが残念。
 
難解でアカデミックな作品が跋扈していた時代に、これだけ怪しく、「お下品」(笑)な傑作を多数生み出したパワーには恐れ入ってしまうが、そんなジョリヴェの作品のエッセンスを集めたと言えるのが、今回ご紹介の「エラート録音集成」。彼の作品の中でも重要な位置を占める「協奏曲」が多数収録されているが、中でも「お下劣度満点」の大傑作が標記の2曲。
 
「トランペット協奏曲第2番」は1954年の作品。ジャズの影響を受けた・・と言われる曲だが、とにかくその原始的かつ「だらしない」雰囲気がもう最高である。安酒場に乱入し、思いっきりネクタイ緩めてクダを巻いているオッチャン・・という風情。最後にはもう酔っ払いまくってロレツも回らないが、とにかく叫んじゃえ!!みたいなエンディング。この部分での名手モーリス・アンドレの妙技はお見事の一言。
 
お次の「オンド・マルトノ協奏曲」は、メシアンの「トゥランガリラ交響曲」でお馴染みのあの電気楽器を用いた協奏曲。もともと呪術的で不思議な音色を奏でる楽器だが、その妖しい音色を100%生かしきって、ここまでためらいも無く奇ッ怪な協奏曲を生み出すとは、サスガ「お下劣大魔王」ジョリヴェ先生ならでは。さあ貴方もこの曲を聴いて、スクリャービンも真っ青のヤバイ世界へトリップしよう!! オンド・マルトノのパイオニア、ジャンヌ・ロリオの演奏も素晴らしい。
 
この4枚組セット、とにかくソリストの顔ぶれが凄く、上記の2人の他にもナヴァラ、ロストロポーヴィッチ、ランパル、ラスキーヌ、グァルダ(打楽器)等々まさにその楽器の第一人者と言える顔ぶれが勢揃い。収録曲も充実しており、「ジョリヴェ・ファンでこのセットを持ってない奴はモグリだ!!」と叫びたくなる程の名盤である。
 
が、このセット、一つだけ大きな弱点がある。ジョリヴェの代表的な傑作にして問題作の「赤道コンチェルト」が収録されていないのだ。このピアノ協奏曲、パリで上演された際にあの「春の祭典」以来という程の大混乱を巻き起こした作品である。1951年の作品で、第1楽章から順にアフリカ、アジア、ポリネシアがテーマになっており、これら赤道直下の熱帯地方の民族音楽を素材に「野蛮」かつエネルギッシュな音楽が展開される。パリでの上演が大騒ぎを巻き起こしたのは、音楽自体の衝撃度ももちろんの事、曲の素材となった熱帯地方が当時フランスの植民地であり、その植民地政策に反発する人々の反感を買った事も一因だったようだ(1951年と言えば第1次インドシナ戦争の真っ只中である)。
 
このユニークすぎる傑作のレコードとして有名だったのが、アントルモンによる1965年の録音。有名盤なだけに、CD時代に移った時も「すぐにCD化されるだろう」と私はタカをくくっていた。ところが鶴首して待ち続けても、一向にCDが出ない。私はてっきり何かのトラブル(権利関係、原盤故障等)で再発売不能になってしまったのだろうと思い、半ば諦めてしまっていた。
ところがこの録音が2011年に突如CD化され再発売されたのには、まさに度肝を抜かれ、狂喜乱舞であった。
 
何故この音源がCD登場から四半世紀にも亘って発売されなかったのかは謎だが、それだけジョリヴェの人気が凋落しているという事なのだろうか。だとしたら可哀想なジョリヴェ大魔王・・・・。世界中が「縮小均衡」っぽい元気の無い雰囲気に包まれている今、彼の怪しくエネルギッシュな音楽で、世界に勢いを取り戻そう!