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クラシックの音楽家や作品を題材にした漫画は、昭和期から多数生み出されてきました。クラシック音楽の愛好家だった手塚治虫はその先駆けと言ってもよいでしょう。ベトナム戦争の頃に、レナード・バーンスタインが反戦のメッセージとして教会でハイドンの「戦時のミサ」を演奏するに際し、(その会場には現れないものの)オーマンディという同時代の名指揮者、そしてニクソンなど当時の政治家までも登場させた《雨のコンダクター》(1974)、手塚の死により未完に終わった《ルードウィヒ・B》(1987-89)など、数々の名作を世に送り出してきました。
 
近年では、2001年から10年余の長きに渡って連載され、女性向け雑誌の掲載作品ながら幅広い層の支持を集めて音楽漫画としては異例の大ヒットとなった二ノ宮知子《のだめカンタービレ》が記憶に新しいところです。そのほかにも、平成期に入ってから数多くのクラシック音楽漫画が出現していますが、その中から2作に的を絞ってご紹介致します。
 
ひとつめは、《カムナガラ》(少年画報社)《神様ドォルズ》(小学館、連載中)で超常の力をもつ少年少女たちが活躍するSFものを得意としてきた、やまむらはじめ による天にひびき》(少年画報社、連載中)です。
舞台は私立の音楽大学で、主人公は幼い頃からヴァイオリンを学ぶも将来を見据えられていない男子学生と、音楽に対する感性が強く、おおらかな性格で周囲の人間を惹き込んでいく指揮科に籍を置く女子学生。実はこのふたりは幼い頃に邂逅していているのですが、そんな彼らを軸にして、様々な音楽や人々がかかわりながら物語が展開されていきます。
 
もうひとつは、《神童》、そして《マエストロ》で異端の才を描いてきた、さそうあきら によるミュジコフィリア》(双葉社、全5巻完結)。京都北部、岩倉にある架空の国立芸術大学を舞台に、音楽に惹き寄せられた若者たちが、それぞれの思う音楽を追究していきます。主人公は美術学部の映像コースに籍を置いているのですが、ひょんな事から音楽学部の現代音楽サークルに引き入れられ、音楽浸りの生活にのめり込んでいきます。題名のミュジコフィリアとは「音楽中毒」という意味で、個性豊かな登場人物たちは、まさに中毒患者よろしく、音楽の世界にどっぷりと浸っています。ちなみに、この《ミュジコフィリア》をもって、さそうあきらの「音楽三部作」は完結との由。
 
この2作のみならず、音楽漫画は作品づくりのための取材が欠かせませんが、共通しているのは綿密な取材に裏打ちされた構成、そして取材に協力した音楽家の方々の献身により非常に内容の濃いものになっているということです。《天にひびき》は現在も連載中ですので、今後の展開が楽しみなところです。

今回の特集では、《天にひびき》をメインに、作中に登場する音楽とその音盤を店頭でご紹介致します。(担当:藤本)

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