★猫丸しりいず第157回
 
◎シューマン:交響曲第2番、第4番
 
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
(国内EMI TOGE12098~  ※SACDハイブリッド/交響曲全集)
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 サヴァリッシュが亡くなった。享年89。
 
普段ならこういう訃報を耳にしてもさほど大きな感慨に耽ったりする事の少ない私だが、サヴァリッシュに関してはそういう訳にはいかない。何しろ、この巨匠は私が最も熱心に音楽を聴いていた20~30歳代の頃、NHK響に頻繁に客演し、幾度となく実演のステージに接して多大な感銘を受けてきた人なのである。
 
若い頃から第一線で大活躍し、膨大な量の録音も遺しているにもかかわらず、レコーディング・アーティストとしての彼はイマイチ人気が無い様に私には感じられる。確かに彼のスタジオ録音にはちょっと四角四面な感じが伴い、「名演なんだけど、もう一味欲しいんだよね」的なモノも散見される。この人はどちらかと言えば「実演の人」だったのだろう。
実演で聴くと、思いがけない程に猛烈な盛り上がりを見せ、「オッ! この人、実は結構アツイじゃないか」と感じさせる事も多かった。フィラデルフィア管を率いて来日した際の東京・サントリーホールでのライヴ録音、R.シュトラウスの「家庭交響曲」他の盤(EMI)には、そんな「実演で燃える男」サヴァリッシュの本領が現れていて、こういうライヴ音源がもう少しあったなら・・・と、つい思ってしまう。
 
ドイツ、オーストリア系の作品はもちろん、「白鳥の湖」等意外なレパートリーにも名演を聴かせた彼だが、私にとって一番印象深いのはシューマンである。もう随分昔、彼がN響定期公演でシューマンを集中的にとりあげた事があった。その時私が「これは万難を排しても聴かねば」と気合が入ったコンサートが「交響曲第2番」の入った回である。「2番」という曲は、シューマンが好きな人とそうでもない人との間で人気に大きな落差があるように思う。一般的な人気はお世辞にも高いとは言えないが、シューマンにこだわりがある演奏家や愛好家にはこの曲を熱愛(偏愛か?)する人が多い。
 
滅多に実演が聴けない「交響曲第4番の第1稿」との組み合わせという、シューマン好きにはこたえられない内容という事もあり、鼻息荒くNHKホールに向かった私。地味すぎるプログラムゆえ、客の入りもサヴァリッシュの登場の割には今一つだったように記憶している。しかし、ホールの3階席には「このプログラムだから聴きに来たんだ!」という雰囲気の漂う、私と同病の人々も少なからずいたようで、皆、身を乗り出すように熱心に演奏に聴き入り、妙な熱気が漂っていた。
 
そして、そんなヲタクたちの熱気がサヴァリッシュ博士に伝わったのか、この日の「2番」は本当に凄かった。髪の毛振り乱しての渾身の指揮ぶりに、オケも熱気のある演奏で応え、終楽章が怒濤の勢いで終結すると満場の大喝采が巻き起こった。ホールを出て、地下鉄の代々木公園駅までの道のりを「ああ、本当に聴きに来て良かった」という満足感を噛みしめながら歩いた事が懐かしく思い出される。
 
サヴァリッシュの幾多の録音の中で代表作と言えるのが、ドレスデンとのシューマン。颯爽とした指揮とオーケストラの暖かな音色が絶妙なバランスを保っており、何度聴いても飽きない名演奏だ。中でも「2番」や「4番」は今後とも自分の中でベストであり続けるだろう。このオケの録音としても、同時期にケンぺと録音したR.シュトラウスと並び、最も素晴らしいものの一つと言える。
 
今思えば、60~70歳代という最円熟期のサヴァリッシュの演奏を何度もナマで聴けた私は、とても幸運であったのだろう。これを機に、この巨匠の遺した名盤にもう一度じっくり接してみたいと思う。天国のサヴァリッシュ博士、お疲れ様でした。そして、本当にありがとう!!!