★猫丸しりいず第151回
 
◎バッハ:クリスマス・オラトリオ
 
カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団 他
(国内アルヒーフ  POCA9057  *限定盤)
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懸念された人類滅亡も無く(爆)、今年も無事に?終了した「クリスマス」。
 
思うに私が子供の頃は、まだ今のように世の中にモノが溢れ返っている時代では無く、子供の服と言えば「お下がり」「使い回し」が当たり前。「プレゼント」とか「ケーキを食べる」なんて事はそれこそクリスマスや誕生日でもなければ望めない事であり、そういう意味では「クリスマス」のイベントとしての重要性(子供にとっての)は今よりずっと大きかったような気がする。実際私も小学生の時に、クリスマスプレゼントとして、カラヤン&フィルハーモニア管の「名序曲集」のレコードをもらい、嬉しくて何度も繰り返し聴いた事を未だ鮮明に記憶している程だ。
 
しかし最近ではクリスマスがあまりに「商売道具」として利用されすぎており、かえって有難味が薄れてしまった気がする。11月に入ってすぐツリー立てたり、クリスマスソングを流したり・・・というのはいくら何でも早すぎやしないかと思うが。
 
それはともかくとして、クリスマスというイベントが、キリスト教文化でない地域でもこれだけポピュラーになっている事自体は凄いとは思う。仏教国タイのバンコクでも、この時期、気温35℃の中でホテルのロビーではクリスマスソングがガンガン流れていたのには苦笑してしまった(まあこれはクリスマス休暇でどっと押し寄せる欧米人観光客向けサービスなのかもしれないけど)。クリスマスはストーリー性もあり、ヴィジュアル的な面も含めてとても「わかりやすい」し、年末年始というどことなく気分が高揚する時期に当たっている事も万国で受け入れられやすい理由となっているのだろう。
 
クリスマスの日の出来事、という設定の童話や文学は多いし、それを素材とした音楽作品もまた多い。それらの中でズバリ「クリスマス」をタイトルにした曲の王様と言えば、これはもう「クリスマス・オラトリオ」でキマリだ。私は若い頃バッハの作品、とりわけこの曲や「マタイ」「ロ短調ミサ」といった宗教大作が「謹厳実直の権化」みたいに思えて、完全に敬遠していた。ところが実際に聴いてみると充分に劇的であり、ポップですらあり、バッハが意外な程に名メロディーメイカーであり・・という事が次々判明。現在の音楽文化の出発点を全て包含しているような懐の深さはサスガ「音楽の父」である。
 
この大作の名盤はいろいろあるが、若干古臭くも安定感抜群の名演なのがリヒターによる1965年録音の盤。ヤノヴィッツ、ルートヴィヒ、ヴンダーリヒ、クラスと揃いも揃った豪華歌手たちの歌の充実度が凄い。もう没後30年以上もたってしまったリヒターは「バッハ演奏の大巨匠」という位置付けが定着しているけれども、考えてみると彼は還暦にも達しない若さで亡くなってしまった人である。普通なら「これから」という齢で死去したにもかかわらず、これだけの録音を遺し、その多くが未だ不動の高評価を得ているのは驚嘆に値する。古楽器系の演奏に押され、このところやや地味な存在になりつつあるリヒターの録音だけど、ベーシックな名盤としての評価はこれからもきっと不動であろう。
 
個人的にはいろいろ「激動」だった2012年もいよいよ終わり。来る年2013年は果たしてどんな年に? 来年も「猫丸しりいず」を引き続きヨロシクお願い申し上げます。