★猫丸しりいず第150回
 
◎モシュコフスキ:スペイン舞曲集第1集
 
 アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン交響楽団
(独DECCA 466378-2)
 
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スペインという国は、旅人に鮮烈な印象を残す。
 
そのせいか、スペインが題材の曲は実に多い。また、それらの曲目を集めた「スペインモノ」アルバムも無数に存在する。
今回ご紹介の音盤はステレオ初期のDECCAの名盤として、あまりに有名なもの。「スペイン(シャブリエ)」「スペイン奇想曲」「アンダルーサ」・・と並んだ曲目は、まさに「スペインモノ」の大王道である。ところがこれらの曲に混ざって1つだけ何か耳慣れない作品が・・・。それがポーランド出身の作曲家、モーリッツ・モシュコフスキ(1854~1925)の「スペイン舞曲」。
 
ピアノの名手として知られたこの人、今日でもピアニストや学習者、ピアノ音楽マニアにはそれなりに知られているようだが、一般的な知名度はお世辞にも高いとは言えない。この「スペイン舞曲」は4手ピアノ用に書かれた作品で、彼と同じポーランド系の作曲家シャルヴェンカによって管弦楽用に編曲されたものらしい。横綱級の有名曲と並んで、なぜこのマイナーな曲がとりあげられたのか。プロデューサーのエリック・スミスのアイディアか、はたまた指揮者アルヘンタのリクエストか、それとも1957年の録音当時は親しまれていた曲だったのか。真相は不明だ。
 
そして実はこの曲、数あるスペインモノ楽曲の中でも屈指の名作ではないか・・と私は思う。実に軽快で楽しく、スペインモノが陥りがちな「汗臭さ」も無い。この盤で採り上げられてなかったら、この名作と一生縁が無かったかも・・と思うと、DECCAには本当に感謝である。
 
この名盤を遺したスペインの指揮者アルヘンタ(1913~1958)は、来たる2013年が生誕100年に当たる。44歳という若さで亡くなった事を考えると、今日でも人気のある録音をこれだけ遺しているのは凄いとも言えるが、それだけに尚、夭折が惜しまれる人。彼は「個性派」「爆演系」的な切り口で語られる事が多いが、この名盤「エスパーニャ」は見通しの良いド直球の名演を聴かせ、彼がただの「怪人指揮者」では無く真の才能を持った名指揮者だった事を痛感させる。彼は指揮法をあのシューリヒトに師事したそうだ。「虚飾の無い孤高の指揮者」というイメージの強いシューリヒトと、アルヘンタとは一見意外な組み合わせにも思えるが、「エスパーニャ」を聴くと彼がシューリヒトに師事した・・というのが、何だかうなづける。DECCAも彼には相当の期待を持っていたようだが、そのキャリアは彼の不慮の死で突然に断ち切られてしまう。
 
彼の死因は「一酸化炭素中毒」。自宅の車庫で扉を閉めたままエンジンをかけていたのが原因だったという(今でも積雪の中でエンジンをかけっぱなっしにしたりすると時々発生する事故だ)。まさにこれからという時に、こんな死に方をしてしまうとは・・。この盤のライナーノーツによれば、彼の死によってDECCAが計画していた彼の録音計画は全て「幻」に終わってしまったのだが、その中にはウィーン・フィルを指揮してのブラームス交響曲全集もあったそうだ。これが「幻」となったのは本当に惜しいとしか言いようが無い。
 
来たる生誕100周年を期に、この「未完成の名指揮者」の芸術に今一度触れてみては如何だろうか。そしてその時は、この「隠れ名作」モシュコフスキもどうぞヨロシク・・・・

 

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