★猫丸しりいず第149回
 
◎リスト:ハンガリー協奏曲(チャイコフスキー編)、ハンガリー幻想曲
 シューベルト:さすらい人幻想曲(リスト編)
 
 シプリアン・カツァリス(P)
 ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
(国内EMI TOCE13264/廃盤)
 
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「乗り物マニア」の私は、必然的に鉄道の駅や空港も大好きである。
 
世界各地には、人名由来の名前を持った空港がたくさんある。その多くは例えばニューヨークの「J.F.ケネディ空港」のように、その国の生んだ偉人、有名人、国家独立の英雄・・・といった人物からとられているのだが、音楽家に由来する名前を持った空港もいくつか存在する。
 
中でもインパクトのあるのは、ブラジル、リオデジャネイロの「アントニオ・カルロス・ジョビン空港」。言うまでも無く、「ボサノヴァの父」と呼ばれるリオゆかりの巨匠にちなんだ名前である。何だか着陸した途端に「イパネマの娘」が流れてきそうな素晴らしいネーミングではないか。ちなみに英国、リヴァプールの空港は「ジョン・レノン空港」。冗談のようだが本当である。なんと空港内にはジョンの銅像まであるらしい。是非訪れたい空港の一つである。
 
クラシック関係の音楽家では、何と言ってもポーランド、ワルシャワの「フレデリック・ショパン国際空港」。ポーランド出身の偉人と言えば、他にもコペルニクスとかキュリー夫人もいるし、音楽家としても首相まで務めたパデレフスキとか、他にも候補がいるはずなのに「やっぱりショパンだべ」という事になったのは、ポーランドの人々にとってショパンの存在が如何に大きいものかを示しているように感じられる。ちなみにザルツブルグの空港は「モーツァルト空港」。ナットク・・・・という感じ。
 
ところで、最近知って驚いたのはハンガリーの首都ブダペストの空港がいつの間にか「リスト・フェレンツ空港」という名前に変わっていた事。何でも2011年のリスト生誕200年を記念して改名したのだそうだ。ただ如何に大作曲家とは言え、バルトークやコダーイ等と同じような位置付けで「ハンガリーの作曲家」と言えるか微妙な立ち位置のこの人の名を、首都の国際空港の名前にする事をハンガリーの人々はどう感じているのだろうか?
興味津々である。
 
今回ご紹介の盤は鬼才カツァリスのデビュー盤で、巨匠オーマンディの最後の録音の一つ。「ハンガリー幻想曲」はともかく、「ハンガリー協奏曲」って何だ?という方が多いだろうが、この曲は最晩年のリストが弟子の女流ピアニスト、メンターのために書いた作品。
しかしリストはピアノ譜だけを遺してこの世を去ってしまう。メンターはこの曲のオーケストレーションを、親しかったチャイコフスキーに依頼するのだが、当時チャイコフスキーはリストの事をあまり快く思っていなかったらしい。「リストの作品のオーケストレーション」と言ってしまうと引き受けてくれないかもしれない・・と案じたメンターは、依頼の際にリストの作品という事実を伏せ、自分の作品という事にした。結果、この曲が「実はリストの作品」
という事実が発覚するまでには時間がかかったようだ。この珍曲、冒頭の木管楽器の扱い方等が実にチャイコフスキー的で、リストの曲にムリヤリにチャイコフスキーの衣裳を着せたような中々珍妙な怪作に仕上がっており、個人的にはとても面白く聴けた。
 
一方「さすらい人」はご存じシューベルトの名作をリストがピアノ協奏曲風にアレンジしたもの。これが意外な程に違和感が無く、楽しく聴ける。カツァリスらしいヒネリの利いた選曲と抜群の技巧のキレが楽しめるこのアルバム。現在は廃盤のようで誠に残念・・。
 
最後に、数ある「人名空港」の中で私が最も「そそられる」ネーミングの空港をご紹介。それはモンゴルの首都ウランバートルの「チンギスハーン国際空港」。これは凄い。着陸した途端に疾風のような襲撃を受けそうだ(実際、強風での欠航が多い空港である)。そして日本にも実は人名空港が存在する。それは高知空港。誰の名前がくっついたかと言えば、そうモチロン土佐のヒーロー、坂●●馬さん。アッと、バレましたね誰だか・・。