★猫丸しりいず第148回
 
◎マルティヌー:ニッポナリ
 
 ぺツコヴァー(S)
 イルジ・ビエロフラーヴェク指揮 プラハ交響楽団
(チェコSUPRAPHON SU3956-2)
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 中国の詩を素材にして生まれたクラシックの名曲・・と言えば、これは皆様ご存じ「大地の歌」だが、その「日本版」とでも言えそうな、和歌を素材にした歌曲集が存在する事は意外に知られていないのではないだろうか。
 
 その作品「ニッポナリ」(「日本也」がなまったらしい)を生んだのはチェコ近代を代表する大物、ボフスラフ・マルティヌー(1890~1959)。膨大な量の作品を遺したこの人、「チェコの作曲家」と言えば誰もが連想するであろう「ボヘミアの土の匂い」みたいなものから遠く離れたパリッと乾いた明快な響き、「マルティヌー節」とでも呼びたい独特の和音進行などなど、聴き始めると結構ハマってしまう面白い作曲家なのだが、この「ニッポナリ」は「アレ?」と思う程にシットリとした響きの作品で驚かされる。
 
この曲は彼がまだ若い1912年(ちょうど100年前!)に書かれたもので、独特の「マルティヌー・スタイル」が完成する前の初期の作品。和歌のチェコ語訳がテキストになっている。「大地の歌」が李白、孟浩然等のオールスター・キャストの詩が元ネタになっているのと同様、「ニッポナリ」の素材となった歌の作者も額田王、大津皇子、小野小町、静御前・・・と、豪華キャスト。しかし、「大地の歌」同様にほとんど原型をとどめない程に翻案されてしまったものが多く、「どの歌が素材になったのか」に関しては、つきとめるのが困難らしい。
 
さて、「日本モノ」という事で、プッチーニやサリヴァンのような怪しい世界を期待すると、良い意味ではずされる。この曲「無理矢理アジア」的なテイストは微塵も無く、まるでドビュッシーのような繊細な響きのする静謐な作品。中でも静御前の歌が素材になっていると言う「雪の上の足跡」は、まさに「雪の舞う日本庭園」を見るような美しい曲。この「ニッポナリ」が肝心の日本でほとんど知られていないのは実にもったいない話だ。
 
「ニッポナリ」のCDは現状では今回ご紹介のビエロフラーヴェク盤しか無い様だが、これが中々の名演で充分満足出来るし、カップリングされている「魔法の夜」「チェコ狂詩曲」がこれまた面白い作品なので、東欧の作品に興味のある方は必聴と思う。そもそも私がこの曲を知ったのは、昔この指揮者がNHK響に客演して「ニッポナリ」をとり上げたからだ。当時、彼やノイマンがN響に客演した際、「交響曲第6番」等のマルティヌーの作品をプログラムに組む事が目立ち、彼らチェコの演奏家たちにとって、この作曲家が如何に大きな存在であるかが伝わってきたものである。
 
当時に比べればかなりポピュラーな存在になった(気がする)とは言え、まだまだ日本では親しまれているとは言い難いマルティヌーの作品。「チェコのコープランド」とでも呼びたい爽快な響きの作品がもっと日本で親しまれる事を願ってやまない。

 

 

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