★猫丸しりいず第147回
 
◎カーター:管弦楽のための変奏曲
 
 ジェイムズ・レヴァイン指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
(海外OEHMSCLASSICS OC502)
 
◎カーター:祭日序曲、交響曲第1番、ピアノ協奏曲
 
 ウェイト(P) ケネス・シャーマーホーン指揮 ナッシュヴィル交響楽団
(NAXOS 8559151)
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 「長寿社会」と言われて久しい。
実際、日本人の平均寿命は男女とも80歳を超えている。80歳半ばまで生きて「それが平均」と言われるのは、何だか本当にスゴイ事ではないか。
 
ただ、単に「長く生きる」というだけでなく、高齢になっても現役として働き続けるという事はやはり今日においても特別である。今回は先日103歳(!)という長寿を全うしたアメリカの巨星エリオット・カーター(1908~2012)がテーマ。
 
彼は100歳を超えてなお現役の作曲家として活動したばかりか、「次の作品」が期待されたというまさに「超人」としか言いようのない人。何しろ生まれが1908年という事は、日本流に言えば「明治の男」。カラヤン、朝比奈隆、オイストラフと同い年!90歳超えて現役だった朝比奈さえ、もう「没後10年」過ぎていると言うのに・・・。ニューヨーク生まれの彼が音楽の道を志すキッカケとなったのは、あのチャールズ・アイヴズとの出会いだったそうだが、当時アイヴズはカーター家の保険を扱っていたらしい(ご存じの通り、アイヴズは保険会社の経営者が「本業」であった)。
 
ハーヴァード大学を出た後、パリのエコール・ノルマルに留学し、名教師ナディア・ブーランジェに師事。ブーレーズがカーターの作品を高く評価し、演奏、録音を重ねた事もあり、1970年代以降はヨーロッパ、そして世界的にも認知度が高まっていった。今回とりあげた「変奏曲」や「ピアノ協奏曲」を聴いて感ずるのは、とにかく演奏家にとって彼の作品は非常に難物であるという事。実際、その楽譜のあまりの複雑さに、以前は「マトモな演奏は不可能」という烙印を押された作品も多々あったようだ。しかし、近年の演奏家たちの技術は作曲者自身も驚かせる程に向上し、それが更にカーターの創作意欲を掻き立てる事につながったようだ。長生きしてよかったですねえ、カーター先生。
 
彼の作品は「ノイジーで聴きづらい」という感じは薄いが、とにかく聴き手に対してニコリともしないハードボイルドなものが多く、それが「カーター=難解」というイメージに結びついてしまっているのだろうが、先入観を捨てて聴いてみれば独特の面白さも感じられるのは事実。ともあれ存命中は「100歳超えの現役作曲家」という点に光が当たり過ぎていた感じもあったが、彼の作品の再評価はこれからが本番だろう。
 
ちなみに、今回ご紹介のNAXOSの盤には彼の最初期の作品「祭日序曲」「交響曲第1番」が入っているが、これが拍子抜けする位に分かりやすく、「なんちゃってコープランド」みたいな趣きなのには笑ってしまう。こんな曲でスタートした人が、その後超コワモテの曲を100歳すぎても書き続けるとは・・・・。人生は摩訶不思議。
 
それにしても、私のようにカーターの半分の年数も生きていないのに、「最近細かい字が見えない」とか「体のあちこちが痛い」なんてお嘆きの貴兄。そんな気合の足りない事ではカーター大先生に「まだ洟垂れ小僧のくせに!」と怒られますよ。

 

 

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